オイル・ダンプ・アーム


グレースG-140S

物好きだと笑われそうですが古いオイルダンプ・アーム(Grace G-140S)を使い始めました。まだ1週間程なのですが好印象を持ったので紹介します。現状ではMM型カートリッジを取り付け3g弱の針圧で普通の盤は問題なくトレースし、安定感のある自然な音を出しています。
これを使おうと考えたのは、静かなピアノ曲の再生時に打鍵後の微小な音揺れを感じたのが発端でした。微小な音揺れの原因は糸ドライブ・プレーヤの不調かと最初は思ったのですが、ダイレクト・ドライブでも同様の現象が起きるので、針先の動き等を観察すると、針の硬い(針圧の大きい)カートリッジを使う場合にはパルス的な音によりアームが振動し微小な音揺れが生じるのではないかと疑うようになりました。そこで、パイプ・アームよりも剛性も重量も大きい本アームを使ってみたところ音揺れは感じなくなり、安定感のある音になりました。
このタイプのアームは外観がゴツイので3g程度の針圧ではトレースできないのではないかと使う前は危惧したのですが、意外なほど軽やかな動きです。安定感のある音はパイプ・アームとは違う感触があるので、手間をかけても最高の音を追求したいという人は使ってみる価値があると思います。(2008.11.1記)

歪みの大きい盤では、上下方向に大きく揺すられるのが本アームの弱点のようです。上下動に伴う音揺れは仕方ないのですが、カーボン針を接合した短小針先を使っているためか、針飛びを生じることがあります。(2008.11.30記)

このアームの使用説明書等の資料はインターネット上では見つからないため、参考となりそうなことを幾つか紹介します。
カーソルが付いていなかったため自作しました。最初にアーム先端部に錘を載せてバランスのとれる重量を測定したところ約30gでした。カートリッジ重量が10g弱なのでカーソル重量は20g強となります。私は、釣りに使う鉛製の錘を叩き潰して板状にし、アームへ取り付けるためのボルトとカートリッジ用ナットを固定しカーソルとしました。写真のアーム先端部に写っているのはカーソル固定ボルトと針圧調整用ワッシャーです。
本アーム内はステレオ仕様の配線となっていたので、カーソル用コネクタとカートリッジ間をハンダ付けで結線しました。これによりカートリッジからイコライザーアンプまで接点なしで繋がります。
支点部のオイルは、近所のホームセンターで買った400円程度のCRCシリコンスプレーから抽出しました。スプレーを容器内に噴射してガスを飛ばすとシリコン・オイルが残ります。結構ねっとりしているのですが粘度として適当なのか不明です。オイル充填は支点上部ネジを外して行いますが、このネジの凹部の点検清掃は重要です。古いものなのでアームを分解して支点下部も点検清掃したほうが良かったと反省しています。オイルを入れた後で傾けると漏れ出し様々な作業が困難となるためセッティング最後にオイル充填を行なう必要がありますが、私はカートリッジのハンダ付け時にオイルをこぼしてしまいました。現状ではカートリッジ交換は困難な状況です。
文章のみでは分かりにくいと思いますが、先日、別のオイル・ダンプ・アームを入手したので、それのセッティングに際しては写真を撮って紹介したいと考えています。


   

型番不明オイル・ダンプ・アーム

古いオイル・ダンプ・アームを再生しました。本アームは支点上部のサファイヤ?が割れていたため修復不可だと思ったのですが、サファイヤの代わりに鉛(ハンダ)を詰めてみたところ、使用可能となりました。まだ長期の使用に耐えられるかは不明ですが、音は良いと思います。
本アームの修復方針として、可能な限り軽量なアーム(約400g)とし、手持ちのカートリッジを交換使用できるようにしたいと思いました。そのため、後部ウェイト内部の角型鉛(約60g)を用いず、下部カバーも付けません。後部ウェイト内の鉛がないと、ラテラル・バランスが取れないので、支点近傍の側面に小さな丸型鉛(約6g)を取り付けて水平となるようにしました。
現状では支点部分にオイルは入れず、オーディオ・テクニカのAT150を改造しカーボン丸針を付けて2g程度の針圧で使っています。
Grace G-140Sでは上下方向に大きく揺すられ針飛びする反った盤でも、本アームは問題なくトレースできました。

2g程度の軽針圧でトレースできるように、アーム内配線を工夫しました。アームの動きを鈍くしていたアース線を外し、ベースでアースをとっても、支点をサファイヤから鉛に変更し導通するためか、ハムの増大はなくOKでした。(アーム内は入手時に付いていた同軸線なので、2本でステレオ仕様になります。手持ちのモガミ?の極細同軸線よりも、やや固い感触であり、より高感度を狙って交換しようかとも思っています。)

本アームのセッティングに際しては写真を撮って紹介したいと考えていましたが、様々なトラブルと試行錯誤のため、説明用の写真を撮るという余裕はなかったので、上記写真程度で勘弁して下さい。
この再生作業を行ってみて、支点の宝石が鉛等で代替できるのであれば、1点支持アームの自作は簡単ではないかと感じました。支点下部は釘、支点上部は鉛を詰めたボルトとナットで作り、木製アーム後部にウェイトを付ければ完成でしょうか?(2009.10.18記)