POPS


Max Woiski /successen 

DELTA, DB6011 , 1960年頃? 

Max Woiski : 笛、太鼓、唄

Banana Boat Song 他 全12曲 

オランダ人?によるラテン音楽のLPです。Max Woiski(1911-1981)はスリナム(旧オランダ領ギアナ)生まれで1930年代にアムステルダムに移住した人です。スリナムは南米最小国で1954年にオランダから自治権を獲得しましたが、過去には黒人奴隷によるプランテーション(コーヒーなどの農場)があり、待遇が劣悪なため脱走し熱帯雨林に住んでいる旧奴隷(ボスネガー)が、時々、農場主や家族を襲撃して悩ませました。Woiskiもボスネガー襲撃に悩まされてオランダに移住した人かも知れません。
解説は読めない言語ですが、1960年ごろの多重録音によるオランダ盤のようで、音は悪くなく、陽気なカリプソなどが楽しめます。
本LPは、変なおじさんのジャケット写真に親近感を覚えて入手しましたが、黒人奴隷の歴史を知ると、因果応報などについて色々と考えさせられます。


Josh White /Program 

London, LL-1341 , 1950年代? 

Josh White : ギター、唄

Lonesome Road 他  全12曲 

米国の黒人歌手ジョシュ・ホワイトのLPです。Josh White(1914-1969)は少年時代には盲目歌手の手を引いて案内するLead Boyとして働き、クリスチャン歌手として有名になった後にはルーズベルト大統領に招かれて唄うようなこともあり、黒人兵士が動物のように地べたで寝かされている不平等などを訴えたそうです。
本LPはフォーク的な優しい印象の唄が収録されており、1950年代と思われる古いLPですが音は悪くなく、瑞々しい感性が時代を感じさせません。
最近、盲導犬を電車の中で見かけましたが、静かに行儀よくしており、私も見習わなくてはいけないと感心しました。

Eloise Lewis

Bahamian Rhythms, No.23 , 1956 

Eloise Lewis : 唄、ギター /Goombay Trio : 伴奏(ベース、ドラム、マラカス)

Memories 他 全12曲 

バハマのカリプソを収録したLPです。欧米人向けの娯楽音楽だと思いますが、1956年の古いLPなので素朴な民謡の香りも残しています。始めて聞いたときは、思わず笑ってしまったような調子はずれな部分もある、陽気な唄です。欧米人のお金持ちは表紙写真のようなバハマのリゾートに滞在し、このような、のんびりした幸福感のある唄を聴いて癒されていたのでしょう。
私も本LPを、お気楽に聞いていたのですが、歌詞に「One Man One Wife One Love True Life」というような宗教的な部分があることに気付きました。欧米人は風光明媚な環境から素朴な幸福感が生まれていると勘違いしているかもしれませんが、実は信仰に基づく良心的な正しい生活から幸福が生まれてくるのではないでしょうか?

ドン・ストーヴァ /シングス・イン・ライフ

Rounder(Trio), PA-3073 , 1972録音 

Don Stover : 唄、バンジョー 、ギター /David Grisman : マンドリン /John Hall : フィドル /他

ダン・ゴーン 他 全14曲

米国のブルーグラスを収録したLPです。ドン・ストーヴァはビル・モンローとの録音もある古いバンジョー奏者で、炭鉱労働者として働きながらラジオ放送を参考に奏法を工夫したようです。演奏は地味ですが、時々、バンジョーが笑っているように聞こえるのは私の錯覚でしょうか?
本LPは上に示す表紙写真に惹かれて購入しました。ドンは妻君ルイーズとの間に9人の子供がいるそうですが、タイトルのThings in Lifeから感じるユーモアに笑ってしまいました。子供を物扱いするとは人権無視だとPTAに叱られそうですが、私は逆にドンの子供に対する深い愛情を感じます。
おいしい食事や綺麗な洋服を与え良い学校に進学させるのが親の愛情だと勘違いしている人が多く、ドンのように子供の我侭を叱り仲良く生活することを喜び、悪を罪として避けることのできる忍耐力と良識を持った大人に育てることが本物の愛情であることを知る人は少ないようです。(私も反省しています)

 

Laura Nyro / The First Songs

Verve(日本グラモフォン発売), MV2006, (発売年等の記載なし)

Laura Nyro :唄、作詞・作曲 /他

そして私が死ぬ時 他 全12曲 

左はピアノ弾語りの女性シンガー・ソング・ライターであるローラ・ニーロのLPです。ローラ・ニーロ(1947-1997)の代表作であればニューヨーク・テンダベリーのほうがよいのでしょうが、これは私が40年程前に生まれて初めて購入したLPで今となっては稀少盤らしいので紹介します。水上はる子氏の解説によれば当時のローラは「誰にでもソウルは歌えるのよ。私はクラシック音楽のある曲はソウル・ミュージックだと思うわ」と語っていたそうです。音楽の分類には詳しくないのですが、私にはゴスペルの香りが感じられます。歌詞の一部を紹介すると「私は死ぬことなど怖くは無い。もし死んで平和になれるのなら喜んで死を迎えよう」など19歳の少女とは思えない内容です。
ローラ・ニーロは、長く多くの人々に愛され続ける稀有な音楽家の一人だと思います。
愛と自由を求める米国の霊歌
(スピリチュアル)です。

右は吉田 美奈子のCD(Extreme Beauty / Victer, MVCD17, 1995)です。意匠的に凝っている歌詞カードを見ると謎めいた部分が多いのですが、唄を聴いていると心に響いてくるフレーズがあります。例えば、 The pain inside true love / It's like the rain on the day (心の痛みから本物の愛が生まれるの。それは人生における慈雨のようなもの)とか Keep the love, just the way it is / Don't be afraid, someday you can free (愛を守ること、その道を恐れることなく進みなさい、いつか貴方は自由になれる)などです。
本CDは静かなバラードから乗りの良いロック調のものまで様々な曲がバランスよく収録されていますが、どの唄にも愛と自由を求める祈りという印象があり、現代日本におけるゴスペルという感じでしょうか?
愛と自由を求める日本の霊歌
(スピリチュアル)です。

  

Judee Sill

ASYLUM, SD5050, 1971

Judee Sill :唄、作詞・作曲 /他

Crayon Angels 他 全11曲 

左は女性シンガー・ソング・ライターであるジュディ・シルのLPです。彼女はアイルランド系米国人で、薬物中毒などで苦しい人生を送ったようですが、本LPはゴスペルの香りがする繊細なフォークという感じがします。遠くにある幸せを夢見るようなフワフワした気持ちが伝わってくる不思議な唄です。多重録音のためか不自然な音が気になりますが独特のメロディーとアレンジが魅力的で、今でも再発CDが出ているようです。
幸せを夢見る不思議な歌
です。

右はゴスペルの香りがする繊細な女性フォーク歌手Lui CollinsのCD(there's a light/ Green Linnet, GLCD1061, 1985)です。ルイ・コリンズは日本では有名とは言い難いと思いますが、本CDではアイルランド系フォークと米国系宗教歌(セイクレッド・ハープ音楽やゴスペル)の香りがする曲を、高く澄んだ声で唄っています。伝統曲を伴奏なしで独唱しているトラックもあり、一般受けはしないと思いますが真面目な内容です。
光を求める真面目な歌
です。


Frank Zappa - WAKA/JAWAKA

Bazarre, P-8277R , 1972

Frank Zappa :ギター、作曲 /他

Yuur Mouth 他 全5曲 

久しぶりに聞き返したLPで印象に残ったものを紹介します。
左はロックの鬼才ザッパのLPです。息子が聞いているロックのCDは、何かが壊れたような音や稚拙な演奏、受け狙いの曲にガッカリすることが多いのですが、このLPでは現代音楽やジャズと言っても良いような緻密で高度な曲と真摯な演奏が素晴らしいと感じました。商業主義を嫌ったZappaは異端視され一般受けしなかったようですが、本物が持つ魅力があると思います。
右のLPはフランクのヴァイオリン・ソナタで、アシュケナージ(ピアノ)とパールマン(ヴァイオリン)の高度な技術による美しい音色と緻密な演奏は、とても魅力的です。但し、完璧な化粧をした美人と同様に、表面的な美しさに騙されているのではないかなという一抹の不安が残るのは私だけでしょうか?