ピアノ

ホーム・ページで紹介しているものは民族音楽が主なのですが、ここではクラシックのピアノ演奏を紹介します。



MOMPOU 

brilliant , 6515 , 1974録音

Federico Mompou : ピアノ

Cansons I danses 他 全16曲

スペインのFederico Mompou(1893-1987)のピアノ曲全集です。モンポウ自演により1974年に収録されたCD4枚組が2千数百円と御買得でした。
民謡などを題材にした内省的な音楽で、現代音楽としては聴きやすいピアノ曲だと思います。上品なクラシック音楽特有の哀愁を帯びた魅力的な演奏です。
http://www.youtube.com/watch?v=Y3uOtOI2xvE
Cansons I dansesなどは、平明なメロディーの中に、こだまのように呼応する不協和音?が混じります。これは静かな日常生活の中に忍び込む不安感というような音で、明るいスペインの空に浮かぶ暗雲という感じでしょうか。(2010.03.27)

クラウディオ・アラウ 

Philips , X-7651-52 , 1979 

クラウディオ・アラウ : ピアノ

Chopin -Nocturnes  全21曲 

Arrau(1903-1991)演奏によるショパンです。アラウはチリ生まれのピアニストでドイツで教育を受けヨーロッパ、アメリカなどで活躍しました。
本LPは状態の悪い中古盤でノイズが多い上に原因不明の音揺れで苦労しましたが、録音は鮮明です。
ショパンの魅力はアラウに教えてもらったようなものなので演奏は素晴らしいとしか言いようはないのですが、75歳頃の録音だということも意味深いことなのでしょう。
昔読んだ「アラウとの対話」では、自惚れずに教養を高め内面を磨くことがピアニストの務めだと考える誠実な人柄を感じました。
この夜想曲はショパンの悲哀を包み込む慈愛というような演奏で、これを聞くのは最近の楽しみです。




CLAUDIO ARRAU /1928-1929 

Philips , SACP-1 , 1992(1928-1929録音)

クラウディオ・アラウ :ピアノ

エステ荘の噴水 他  全3曲

CLAUDIO ARRAU /the final sessions 

Philips , 475-7947 , 2006(1988-1991録音)

Bach ,Beethoven, Schubert, Debussy の曲  全7枚組

チリ生まれのピアニストArrau(1903-1991)のCDです。
左CDはピアノ・コンクール受賞直後のSP録音を復刻したものでアラウ24歳です。右CDは88歳で世を去ったアラウ最後の録音を集めたものです。アラウはベートーベンなどで定評がある重厚で渋い演奏家だと思っていましたが、意外なことに右CDで最も魅力的なのがドビュッシーで、左CDのリストにも似た印象があるため、アラウは華やかで軽快な曲が良く似合う人ではないかと感じました。
バッハのパルティータも上品で折り目正しい演奏ですが、アラウにしては珍しく自信無さそうなタッチと寂しげな響きのピアノです。
88歳でバッハを録音する時には「人生の課題を総決算する」というような特別な思いがあったのではないかと思いますが、アラウのような教養人でさえ「少年老いやすく学成り難し」と感じるのは私の錯覚でしょうか?
人は全て「人生の課題」を携えて生まれてきます。課題は人により様々であると思いますが、娯楽ばかりを追い求めていては、夏休みの最後に宿題が残っていて慌てる子供と同じことになります。
普通の人の「人生の課題」は、自分の内面の悪を知り本物の幸福を知ることですが、天賦の才能を持つ音楽家などには特殊な天命があるのかも知れません。(2010.06.06)

 

ギオマール・ノヴァエス 

VOX , STPL58170 , Re-master盤 (1950年頃録音)

ギオマール・ノヴァエス : ピアノ

Chopin -Waltzes  全15曲 

(右LPはVOX , PL7560 , 1952 : Chopin -Etudes他  全15曲 )

Novaes(1895-1979)演奏によるショパンです。ノヴァエスはブラジル生まれのピアニストでフランスで教育を受けアメリカなどで活躍したようです。本LPは1950年頃の録音をステレオ盤で再発したもので、録音が良いとは言えませんが鑑賞に堪えます。
コロコロと転がっていくような軽快な演奏は魅力的です。ブラジル生まれと、この明るさを結びつけるのは軽薄でしょうか?ショパンは悲哀を基調とした音楽だと思うのですが、このワルツでは軽さ、明るさによるコントラストが魅力を引き出しているように感じます。
蛇足ですが右LPは1952年という記載がありオリジナル盤と呼ばれる物だと思います。左LPは再発盤で年号の記載が見当たらないのですが似た印象なのでの同時期の録音だと推測しました。1952年というような古いLPは買ったことがなかったのですが、最近中古屋さんで1000円程だったので入手しました。YAHOOオークションなどで高価な盤を見て驚くのですが、私の知らない高級な趣味の世界があるのだと思います。都心まで行かないとクラシックLPを扱っている店がないのが残念ですが、ここで紹介したような盤が数百円で買えるので一般人には有難い時代です。

セルゲイ・ラフマニノフ 

L'OISEAU-LYRE , 414 099-1 , 1985 (1919〜1929年のピアノ・ロール録音)

セルゲイ・ラフマニノフ : ピアノ

Chopin -Polonais 他 全11曲 

Rachmaninov(1873-1943)演奏によるショパン他です。Ampicoというピアノ・ロール録音システムで1919年〜1929年に記録されたものを1979年に再生(自動ピアノ演奏)しステレオ録音されたものなので、音は悪くありません。
ラフマニノフはロシア生まれの有名な作曲家で、ピアノ演奏も名人でした。本LPでも軽々と難曲を弾いていくのを聞くのは爽快ですが、時々、ピアノ演奏なんか面白くないもんね・・というような投げやりな表情を感じるのは私の錯覚でしょうか?
有り余る才能は良いことばかりではなさそうです。

スヴャトスラフ・リヒテル 

HMV , SXLP30510 , 1979 (1977年録音)

スヴャトスラフ・リヒテル : ピアノ

Chopin -The Four Scherzos 全4曲 

Richter(1915-1997)演奏によるショパンです。ロシアの巨匠リヒテルのピアノ演奏技術は100点満点という感じで文句の付けようがないのですが、私には圧迫感とういようなものが感じられるので敬遠してしまいます。
本LPのように圧倒的な力で捻じ伏せるようなピアノ演奏を好む人は多いようです。このような演奏は、オリンピック競技であれば金メダルでしょうが、音楽は勝負でも戦争でもないと思います。

クラシックの演奏は表面的には素晴らしいものばかりなのですが、内実は天国的なものと地獄的なものがあるのではないかと疑うようになりました。

Emil Gilels / Scarlatti Debussy Schumann 

Aura , AUR 170-2 ADD , 2000(1984録音) 

エミール・ギレリス : ピアノ

Debussy -Pour le piano 他全23曲 

Gilels(1916-1985)演奏によるスカルラッティ他です。ギレリスはロシア生まれのピアニストで、完璧で力強い「鋼鉄のピアニズム」が枯淡の境地に変わっていったと言われている晩年の演奏会(1984年9月25日Locarno)を収録したCDです。ミスタッチもあるようですが、歌心を感じる明晰で魅力的な演奏です。ライブ録音なので、特別に素晴らしい音というわけではないのですが、私の使用している2つのCDプレーヤの音質差が感じられたので紹介します。
常用している古いKenwood L-D1は、新しいEsoteric X-30に比べて、微妙に音の明瞭さが劣るようです。大げさに言うと、ベールが懸ったような、音が遠くから聞こえてくるような感じです。酷使しているL-D1をメンテしようかと思って聴き比べたので、何かの不具合があるのかも知れませんが、出力コンデンサーが電解なのが原因のような気がします。(昔、コンデンサーの比較試聴をした時に、電解はベールが懸ったような音がすると感じました)
微妙な差なので、アナログ的な柔らかい音がするL-D1のほうが良い音だと判断する人も多そうです。

 

Moszkowski /Alain Raes 

Solstice, SOCD102 , 1992録音

Alain Raes : ピアノ 

Etudes Op. 72&92 全27曲 

モシュコフスキのピアノ曲を収録したCDです。Moritz Moszkowski(1854-1925)はポーランド生まれのピアニスト・作曲家で晩年はパリに住み、本CDでの演奏はフランスのAlain Raesです。以下に本CD収録曲を紹介しますがその演奏技術の高さと録音の良さに驚きます
Etude nº 12 Op. 92 - M. Moszkowski (only left hand)http://www.youtube.com/watch?v=uLEL4eYy-tg
話題は変わりますが、冬季オリンピックのスキー競技を見て、本CDを思い出しました。卓越した技術に驚きますが、あまりのスピードは危険です。
音楽の場合、卓越した技術は、素晴らしい演奏を楽しめる他人には良いものですが、本人にとっては自己愛を生みだす危険があります。自己愛は、現世では「誇り」として心地よい気分を生みますが、来生で地獄へ導く危険なものだと知る人は少ないようです。
おまけ)世の中には上手なピアニストがいて驚きます。
Stephen Hough warms up with Moszkowskihttp://www.youtube.com/watch?v=n9-XXix3wVA




Liszt  

hyperion, CDA67085 , 2000

Stephen Hough : ピアノ

Polonaise melancolique in C minor 他  全6曲

欧州古典のピアノ演奏を収録したCDです。
Stephen Houghという名手によるリストの演奏です。リストの曲は演奏が難しそうなのですが、素晴らしい技巧を持ったHoughの演奏であれば私にも曲の魅力がわかるかもしれないと思い本CDを入手しました。聞いた印象は、複雑な物語と感情を精緻に組み立てているという感じの曲で、響きの多い録音のせいか、表紙絵のように霞がかかったような肌触りの演奏です。欧州は今回のサッカーのワールド・カップでは不調のようですが、昔は高級だと思っていたクラシック音楽の輝きにも霞がかかってきたという感じがしました。(2010.06.27)