太平洋

  

ニューカレドニアのカナク族(Chants Kanaks)

Le Chant du Monde(キング), LDX274909 , 1990

カナク族の人々 : 唄、演奏

マレクラのビグナンバスの歌 他 全18曲

ニューカレドニアのカナク族の儀礼歌と子守唄を収録したCDです。本CD収録の「マレクラのビグナンバスの歌:Bignambas de Malekula」を聴いて驚きました。これは19世紀末に牧師によって持ち込まれた新教の讃美歌に由来すると解説に記されていますが、右CDの米国セイクレッド・ハープと同じものです。セイクレッド・ハープはファソラ音楽とも称され、18世紀半ばからニュー・イングランド地方で盛んになった歌唱学校にさかのぼり、かん高い声で思いっきり唄われる合唱で、静かな宗教音楽ではありません。この合唱は人に聴かせるものではなく、歌い手のためのものであり、みんなが歌唱に参加して、抑制無く唄う事を楽しむのだそうです。
プロ歌手の唄う右CDは洗練されすぎた印象ですが、カナク族の現地録音は迫力満点で生き生きした素晴らしい合唱です。皆が好き勝手な声を出しているのですが、喉声(ホーミーやブルガリア・ボイス風の声)を出す人もおり、非常に複雑な表情を持っています。どれほど優れた合唱指導者がいたとしても楽譜に基づく訓練などでは作り出せない音楽であると感じました。人間業を超えた力を感じるのは私一人ではないでしょう。
右CDがスーパーで売っている「栽培きのこ」であれば、左CDは山で採ってきた「天然きのこ」のような感じです。

追伸)1年程前に合唱に関する夢を見てから、色々な音源を入手し聞いてきたのですがピンと来るものがなく興味を失いかけていた時に本CDに出会いました。合唱に関する謎の一部が解けたような感じもしますが、夢には、より深い別の意味もあったような気がします。(2010.02.22)