日本

長崎・生月島のオラショ

King, KICW85186 , 2001

大岡 留一、土肥 栄、磯本 義明 : 詠唱

デウスパイテロ 他 全34曲 

長崎の隠れキリシタンの詠唱であるオラショを収録したCDです。400年以上前にヨーロッパから伝来したキリスト教が禁教になり、宣教師との接触を絶たれ、教義の理解は不十分ながら「形」だけが呪文のように口承された祈りがオラショだそうです。本CDの帯には聖歌という文字がありますが、聞いた印象は歌ではなく、仏教における念仏とか詠唱という感じです。後半には抑揚(旋律?)を感じる部分もありますが、これを男声合唱というのは無理だと思います。私は退屈なので聞き通していません。
本CDは、聴いて楽しむものではなく、消えゆく伝統の記録です。(これを音楽CDとして発売するのは無理があると思います)



ホロコーストの歌 

聖イエス会ロゴス社 , PCDZ-1599 , 1998

第10次 黎明合唱団 : 合唱

イスラエル国歌 他 全18曲

日本のキリスト教系合唱団による米国での演奏会を収録したLPです。
聖イエス会という京都にあるキリスト教団に属した黎明合唱団が、米国でユダヤ系の歌を主とした演奏会を行ったようです。私は好奇心から本CDを入手したのですが、普通の混声合唱という感じで、日本人がヘブライ語の歌を米国で唄う意図が分かりません。
キリスト教には様々な会派があり、不思議な教義もあるようで、本物の信仰を得ることは至難の業のような気がします。
宗教は内面的なものです。外面的な言葉や動作にこだわり、他人をコントロールするための組織を作り、現世利益を目的とするものはインチキ宗教なので、注意が必要です。(私は特定の団体を批判しているわけではありません。この理解によれば、殆どの宗教団体がインチキものとなりそうです)

高田三郎作品集U

Victor, SJX-1112 , 1981

高田三郎 指揮 盛岡コメット混声合唱団、大久保混声合唱団

ひたすらな道 他 全3曲

日本の混声合唱を収録したLPです。
合唱を好きな人は多いようで、色々な合唱団があるようです。本LPは全日本合唱連盟推薦という帯も付いており、たぶん、素人合唱団の御手本として作成されたものだと思います。お手本らしく、真面目で丁寧な合唱なのですが、聴いて楽しいものではありません。型にはまった感じで、自由で生き生きとした感じが希薄です。本LPと同様のものを10枚程度入手して聴いてみたのですが、残念ながら面白く感じたLPはありませんでした。
こうしなさい、アレはダメ、と形に嵌めるための指導では、外面的には一糸乱れぬ綺麗な合唱はできるでしょうが、自発性のある生き生きとした音楽を生むことは困難のようです。

謡曲 盛久

能楽名盤会, NL-1803 , 昭和32年11月14日録音

林喜右衛門:シテ・地、原祥隆:地、福井幾十郎:ワキ、他

観世流謡曲 盛久 全曲

謡曲 盛久を収録したLPです。
謡曲は独特の迫力のある声で、男声合唱として聞くと、面白い音楽です。他人の声を聞きながら、微妙な間合いを取り、声を合わせていくという印象で、歌詞が分らない私のような素人でも、男声合唱の一種として楽しめます。
能楽は歌舞伎に比べ地味で内面的な演劇であり、謡(歌詞の意味)を理解することが重要だそうです。盛久は観世音菩薩を篤く信仰していたため、刑場で斬首されようという時に懐の経巻から強烈な光が出て、処刑人の刀を真っ二つにしてしまったという物語ですが、信仰による奇跡として理解すると面白いと思いました。

日本こどものうた名曲全集その6 - 赤いくつ

King, KR(h)1011 , 1966

東京少年少女合唱隊、倍賞 千恵子、他

あんたがたどこさ 他 全20曲

子供の唄を収録したLPです。
昔の子供達は皆で歌いながら遊んでいました。本LPにも「あんたがたどこさ」などの童謡(わらべうた)が収録されていますが、最近は近所の公園でも童謡を歌っている子供の声を聞いたことがなく、寂しい感じです。一人でも大きな声で歌い出せば、声を合わせる子供達が現れるような気がします。

雅楽

ビクター, VICG5354, 1981録音

東京樂所 :演奏 

萬歳樂 他 全3曲 

図書館で借りた雅楽のCDです。雅楽は日本の宮廷音楽で、5世紀から9世紀の間に中国等から渡来した外来音楽と5世紀以前の日本古来の音楽があるそうです。あまりの古さに驚きますが、日本が世界に誇れる貴重な音楽です。
雅楽は、私には歯が立たないと思い敬遠してきたのですが、南米の不協和音が耳に痛いような音楽を聴いて思い出し、真面目に本CDを聞いてみました。以前に思っていたよりは、楽しめるようになったなと感じました。
雅正の音楽
としてお勧めです。

 

能楽囃子

ビクター, VICG60394, 1973〜1976録音

藤田大五郎:笛、北村治:小鼓 、安福建雄:大鼓、柿本豊次:太鼓、他

道成寺 他 全5曲 

能楽囃子のCDです。笛、小鼓、大鼓、太鼓という四つの楽器(四拍子)が構築する「間」の世界が能楽囃子だそうです。本CDは人間国宝を含む名人を集めて観世能楽堂などで収録されました。「ヤ」というような掛声とともに演奏される囃子は重厚で緊迫感のあるものです。
能に関する知識はないのですが、重く暗く迫力のある音楽で、私には武士の亡霊というイメージが感じられます。完成度の高さを世界に誇れる音楽だと思いますが、楽しく聴けるものではありません。
亡霊の怨念は怖いですね

正調 日本民謡 第2集「青森」 

King, SKM202 , 1977

成田雲竹 : 唄 /浅利みき: 唄 /吉沢浩: 唄 /若美家五郎: 唄 /大塚文雄: 唄 /高橋つや: 唄 /工藤君江: 唄 /館松栄喜: 唄 /他

正調俵つみ唄、ホーハイ節 他 全14曲

岩井きよ子 みちのく民謡集 

テイチク, NT-1450 , ?

岩井きよ子 : 唄 他

俵つみ唄 他 全14曲 

青森付近の民謡を集めたLP2枚を紹介します。左LPは「正調」の民謡だと言う事です。これには館松栄喜の唄う「正調俵つみ唄」が収録されており、右LPの岩井きよ子の唄う「俵つみ唄」と比べてみました。この唄は、昔、唄上手な農民が農閑期に庄屋などを訪問して唄ったものだそうですが、歌詞は「おほめ下んせ、旦那さま、コラ、お祝い下んせ、かか様、めでたいナー、めでたいナー、この家旦那様は百万長者と申される」で終わる面白い内容です。館松栄喜の「正調」のほうは、いかにも旦那様のお座敷で歌っているという感じがしますが、岩井きよ子は、唄が好きだから唄っているというような明るく元気のよい唄い方です。私は、岩井きよ子のLPを聞いて、この唄の面白さに気付きました。
左LPで面白いのは、成田雲竹の唄う「弥三郎節」や「ホーハイ節」です。「ホーハイ節」の歌詞は「稲の穂は祈る」で終わると思っていたのですが、今、歌詞カードを見ると「稲の穂は実る」が正しいようです。空耳というか聞き違いでした。数年前に100円ショップで買った青森民謡のCDにも「ホーハイ節」が収録されており、記載はありませんが、多分、成田雲竹が唄っていると思います。(成田雲竹のLPをYAHOOオークションで見かけても、5000円程の高値になってしまい私には落札できません)

馬子唄をたずねて 

King, SKM98 , 1971

成田雲竹 : 唄 /樺沢芳勝: 唄 /杉本栄夫: 唄 /館松栄喜: 唄 /佐藤松子: 唄 /岩花賢蔵: 唄 /他

小諸馬子唄 他 全14曲 

日本民謡のうち「馬子唄」を全国から集めたLPです。馬子唄の内容や形式は様々ですが、全体に哀調を帯び、馬に対する愛情を唄ったものが多いようです。(私が子供の頃、祖父の家には馬がいて、一つ屋根の下で寝食を共にしていました。)
本LPでは各地の名人が馬子唄を唄っており、津軽は成田雲竹です。私には日本民謡に関する見識は全くありませんが、夫々に味わい深いものだと思います。方言が理解できない部分も多いのですが、昔の人々の、ゆったりとした生活と、馬を気遣うやさしい気持ちが感じられます。

江差追分 

キャニオン, C30G0066-67 , 1980

萩原克彦 : 唄 /山本ナツ子 : 唄 /青坂満 :唄 /房田勝芳:唄 /近江タキ :三味線 /藤田淳一 :三味線 /湊谷七朗 :尺八 /他

江差追分 全18曲 

江差追分全国大会第17回までの優勝者全員の唄を収録したLPです。追分の起源は信州小諸にあり、北海道の江差まで伝わり、200年程前に江差追分が生まれたそうです。
本LPは、波の音をバックに延々と同じ唄が続くのですが、時折、唄者と伴奏者の呼吸が一致しているような不思議な感覚を得ることができます。その時には、三味線は波の音のようで、尺八は風の音のようです。
解説に書かれた漁師の話を紹介します。
「追分つうのは早い話、子守唄だべね。母親が死んだら、一晩じゅう唄ってやるべと思ってる。おふくろは、ねんねんころりよ唄って俺を寝かせてくれたんだ。こんどは俺が追分で成仏させてやる番ではないかい」

津軽三味線

King, KICH2194, 1963/1997

高橋竹山 :三味線 

津軽よされ節 他 全14曲 

図書館で借りた津軽三味線の名人、高橋竹山の初アルバムです。成田雲竹による各曲の解説と田辺尚雄による津軽三味線についての解説がついているので、とても勉強になります。630年以上前の曲もあるということで驚きました。
演奏は、ていねいに初吹き込みをしたという印象です。唄が聞こえてくるような端正な演奏から、竹山師の素朴な人柄が伝わってきます。
一服の清涼剤
としてお勧めです。

 

ゴッタン

CBSソニー, 25AG247 , 1978

荒武 タミ :唱 、ゴッタン、話 

お夏くどき 他 全14曲 

薩摩語りの古謡を収録したLPです。5歳で目が見えなくなったという荒武 タミさんがゴッタンという素朴な三味線を弾きながら唄います。印象深いのはインタビューが収録されていることで「いつもゴッタンと話をしている。楽器と心が一つにならないと演奏できない」というような話が聞けます。
薩摩語りは庶民的な曲だと思うのですが、荒削りで野太いゴッタンの音のためか一種の迫力というものが感じられます。
一心
で唄われる薩摩語りに触れたい人にお薦めです。

 

津軽三味線 秋田三味線 競演集 

クラウン, SW-5069 , ? 

高橋竹山 : 三味線 /浅野梅若 : 三味線 /加藤昇風 :尺八/ 古屋兵治 :尺八

秋田荷方節 他  全16曲 

津軽三味線と秋田三味線を収録したLPです。津軽三味線は高橋竹山の独奏、秋田三味線は浅野梅若と尺八奏者の合奏です。盲人の高橋竹山は生活するための門付け芸として三味線を初め、浅野梅若は楽しみのために三味線を始めたそうです。気性が激しく、先取り精神のある津軽人の性格を持つ竹山に対して、気性はおだやかで、はにかみ屋、おおらかな豊かさを持つ秋田人の梅若だそうです。
演奏は、研ぎ澄まされた音と折り目正しさの竹山に対し、やや古臭い(田舎臭い?)がゆったりとした華やかさのある梅若というように感じます。
競演集などというと、つい比較してしまい三味線演奏を楽しむのであれば竹山のほうが良いという人が多そうです。しかし、各々の個性や伝統は優劣を競うものではなく、人に知られずとも梅若のような演奏が
受け継がれていくことは大切だと思います。

 

平家琵琶の世界

KING, KICX7040 , 1971/1998

館山 甲午 :平家琵琶

祇園精舎 他 全4曲 

平家物語を琵琶で語る芸能を「平家琵琶」または「平曲」というそうです。明治以降は衰退しましたが、津軽系の館山漸之進は「平家音楽史」を刊行し平家琵琶の価値を説き、本CDの奏者の甲午氏は、その子息です。親子2代の成果が本CDに集約されているとのことです。
中世の無常観を伝える平家琵琶の素晴らしさが理解できる私ではないのですが、本当に貴重な記録だと思います

世の無常を観じたい人にお薦めです。

 

尺八の真髄 /琴古流尺八本曲シリーズX

Victor, SJL-2065 , ? 

山口五郎 : 尺八独奏 、松村芳盟 : 替手

琴三虚霊 他  全3曲 

琴古流の尺八曲を収録したLPです。古来、禅宗の一派である普化宗の虚無僧たちによって吹奏されてきた曲です。虚無僧は室町末期には簡易ベットとして薦(こも)を携帯しているのが特徴で、薦僧が訛ったものだそうですが、江戸時代に顔を隠す深い笠を被った独特の姿になり、明治4年には政府が廃止を宣言しました。
尺八演奏を楽しみたいのであれば「鹿の遠音」などの有名曲のほうが良いと思いますが、宗教曲という地味な印象の曲なので本LPを紹介しました。但し、山口五郎氏による演奏は立派で完璧すぎるので、内省的な音楽というよりも、人に聞かせるための音楽という香りが強いのが残念です。

 

Tajima Tadashi

World Network, 32.379 , 1999

田嶋 直士 :尺八

本調べ 他 全8曲 

尺八のCDです。田嶋 直士氏は1942年生まれで、都山流から初め、2代目酒井竹保などに師事したということです。現代的「吹禅」を目標に、海外でも弟子を指導しているそうで、本CDもドイツ録音です。
微妙な音色変化が良く分る演奏・録音で、ゆったりとしずかな感じがしま
す。
外国で奏される尺八を聞きたい人にお薦めです。

 

筝の魅力 - 奥伝編

King, KICH2058 , 1997

米川 敏子 :筝、歌 /他 

冬の曲 他 全3曲 

図書館で借りた筝のCDです。奏者の米川 敏子さんは人間国宝です。
端正で繊細、華やかという印象の演奏です。日本の筝は、女子のお稽古事として盛んで、昔は町中でも練習の音が聞こえたのですが、最近は耳にしなくなりました。ピアノも悪くありませんが筝が聞こえなくなるのは残念です。
お稽古用
にお薦めです。

 

囃子

KING, KICX8578, 2000

神田囃子保存会、佐原囃子保存会、葛西ばやし保存会、京都長刀鉾囃子方連中 :演奏 

神楽 他 全17曲 

日本各地の祭り囃子を集めたCDです。祭り囃子は、京都の祇園囃子から始まったそうですが、今でも日本各地で親しまれています。
本CDを聞くと、一種独特の郷愁というものを感じます。
祭り囃子
を忘れそうな人にお勧めです。

 

佐原囃子

キングレコード, KH(R)-5052 , 1968

佐原囃子保存会 :唄、演奏 

さんぎり 他 全9曲 

利根川のほとりの千葉県佐原市は昔から開けた江戸文化の面影を残すところで、ここの祭囃子は関東唯一とまで言われたそうです。
本LPを聞いた印象も、江戸の香りを残しているのか、ゆったりと雅な囃子です。

祭囃子
の通にお薦めです。

 

青森ねぶた囃子1999

青森市, ? , 1999

各地のねぶた囃子  

1999年の青森ねぶた囃子を主に収録した音楽CD+動画CDです。弘前、黒石、五所川原のものと、1969年の古いものも入っています。
ねぶた囃子が大好きな
人にお薦めです。

 

 

Extreme Beauty

Victer, MVCD17, 1995

吉田 美奈子 :唄、作詞・作曲 /他

精霊の降りる街 他 全10曲 

吉田 美奈子のCDです。意匠的に凝っている歌詞カードを見ると謎めいた部分が多いのですが、唄を聴いていると心に響いてくるフレーズがあります。例えば、 The pain inside true love / It's like the rain on the day (心の痛みから本物の愛が生まれるの。それは人生における慈雨のようなもの)とか Keep the love, just the way it is / Don't be afraid, someday you can free (愛を守ること、その道を恐れることなく進みなさい、いつか貴方は自由になれる)などです。
本CDは静かなバラードから乗りの良いロック調のものまで様々な曲がバランスよく収録されていますが、どの唄にも愛と自由を求める祈りという印象があり、現代日本におけるゴスペルという感じでしょうか?
愛と自由を求める日本の霊歌
(スピリチュアル)です。