イラン

 

ペルシャ追想 /イランの古典音楽 

King, K30Y , 1982(1977年録音)

ファーテメ・パリーサー : アヴァーズ(唄) / ホセイン・アリーザーデ: タール /パルヴィーズ・メシュカーティヤーン: サントール/ アリー・アクバル・シェカールチー: カマーンチェ/モハマンドアリー・キャーニーネジャード: ネイ/ モルテザー・アイヤーン: ザルブ/ ジェラール・ゾルフォヌーン: セタール 他

ナヴァー旋法によるアーヴァーズ、 アブーアター旋法によるセタール独奏 他 全4曲 

Musique Persane  

Ocora, OCR57 , 1971

Abdolvahhab Shahidi : 唄、ウード / Jalil Shahnaz : タール /Asqar Bahari : カマーンチェ/ Faramarz Payvar : サントール/ Hasan Nahid: ネイ /Hoseyn Tehrani: Tombak

Dastgah Mahur 他 全2曲 

左はペルシャ古典音楽のCD、右はLPです。
左CDは1977年夏シーラーズの庭園で行われた第11回芸術祭の実況録音です。拓殖元一氏の解説に拠れば、雑音の多い部分を割愛して編集したそうです が、悪い録音とは感じません。この録音で印象深いのは女声(ファーテメ・パリーサー)によるアヴァーズです。その声量豊かで張りのある美声と技巧に驚きま す。ペルシャでは男性よりも女性のほうが支配権を持つ家庭が多いということですが、納得させられるような歌声です。(こんな声で叱られたらコワイです)ま た、ジェラール・ゾルフォヌーンのセタール独奏も、知的で洗練された音楽が楽しめます。ペルシャの人々は昔から、繊細で頭が良いと言われてきましたが、納 得せざるを得ないような演奏です。
右LPは1971年に放送用にスタジオ録音されたもののようです。OcoraのLPらしく、鮮明な音で格調高い演奏が楽しめます。ペルシャの古典音楽は都 会の上流・知識階級の家庭内で演奏されたものだそうですが、いくつかの録音を聞くと、演奏者の組み合わせや録音状態により各演奏から受ける印象が異なりま す。慣れてくると、JAZZや西洋クラシックと同じように楽しめる音楽だと思います。

Mohammad Reza Shadjarian

Ocora , C559097 , 1990 

Mohammad Reza Shadjarian  : 唱(アーヴァーズ) / Parviz Mechkatian :サントール / Mohammad Firouzi :バルバット / Dariouche Pir-Niakan:タール /Djamchid Andalibi:ネイ /Bijan Kamkar:ダフ

Pish Daramad 他 全9曲 

ペルシャ古典音楽の演奏会を収録したCDです。モハマド・レザ・シャザリアンのグルー プによる1989年パリでの演奏会で、演奏も録音も素晴らしいと思います。モハマド・レザ・シャザリアンは5歳から父親の指導で唄を初め、成人後はテヘラ ンに出て多くの師からサントールも含めたペルシャ古典音楽全般を習いました。録音当時にはテヘラン大学で古典歌唱法を教えることもあったようです。
本CDは昔聞いた時は印象が薄かったのですが、静かな時に比較的大きな音量で聞いたところ録音の素晴らしさを実感しました。録音の良さを実感するためには 静かな環境と良質な再生装置が必要かもしれません。また、最近イランの音楽に慣れてきたためか、唄と演奏に引き込まれました。ペルシャ古典音楽は、細かく 動く複雑な表情を持っているので音楽を聞き取るための努力が必要かもしれません。

ペルシャ古典音楽を楽しみたい人にお勧めです。

ペルシャの伝統 / イランの古典音楽

NONSUCH , WPCS-5225 , 1973録音 

ファラマール・バイヴァール :サントール / ホーシャン・ザリフ : タール / ラマトラー・バディ : カマンチェ / カテレ・バルヴァネー : 唄

シュール旋法によるサントールの演奏 他 全6曲 

ペルシャ(イラン)の音楽は西アジア文化圏の中では最も古い歴史を持っており、イン ド、中国の音楽にも影響を与えたとのことです。但し、イスラム教は音楽に対して享楽、堕落に導くものとして警戒的な立場をとったため、古典音楽の公開演奏 会は少なく、宮廷や上流家庭での演奏に限られていました。
本CDには伝統楽器による独奏、及び、声楽と器楽のアンサンブルが収録されています。録音が多少古いのですが音質は悪くなく、華やかな音色をもつ瞑想的な演奏が楽しめます
。良く分かる日本語の解説が付いています。
ペルシャ古典音楽を知りたい人にお勧めです。

アーヴァーズ追想

KING , KICC5105 , 1991 

アリーレザー・ エフテハーリー:唄(アーヴァーズ) / ダーヴード・ギャンジェイー:キャマーンチェ / ベフザード・フォルーハリー:ネイ /他

マーフールによる合奏「愛の秘密」 他 全4曲 

イランの古典音楽を収録したCDです。種々の珍しい伝統楽器による合奏と唄(アー ヴァーズ)です。私はイランの音楽を多く聴いているわけではないのですが、いかにもペルシャ音楽という感じの色彩感のある音楽です。格調高い演奏で、地味 ですが徐々に音楽に引き込まれるような魅力があります。
アーヴァーズの魅力を知りたい人にお勧めです。

 

IRAN /Vol.1 

Ocora, 558540 , 1979

Dariush Tala'i : setar & tar

Dastgah-e Mahur 他 全3曲 

イランのリュート系の弦楽器を収録したLPです。setar(セタール)は3+1弦のラッキョウ型の楽器で、tar(タール)は上写真にある3×2弦の8の字型の楽器のようです。
演奏者Dariush Tala'iは1952年生まれでAli-Akbar Shahnaziなどの多くの師に学びました。イランには古くから多くの弦楽器の名人がいましたが、その伝統を受け継いでいる人は僅かのようです。
本LPを初めて聞いた時には、音程の合わないヘタな演奏だと感じショックを受けましたが、最近ペルシャの音楽に慣れてきたのか、素晴らしい演奏であること が理解できるようになりました。とても複雑な表情を持った音楽なので、西洋音楽的な耳では不調和に聞こえたのだと思います。A面のセタール演奏は非常に繊 細で洗練されたイメージを受け、B面のタール演奏は不協和音の多い謎のような音楽です。もう少し聞き込めば、B面の魅力も分かるようになるかも知れませ ん。

Chahargah 

Mahoor, M.CD154 , ?

Dariush Tala'i : setar

Dastgah-e Chahargah  全21曲 

Paykubi 

Mahoor, M.CD14 , ?

Hoseyn Alizadeh : setar / Daryush Zargari : tombak

Improvisation in Chahargah  全14曲 

セタールの演奏で、左はDariush Tala'i、右はHoseyn Alizadehの演奏によるCDです。Dariush Tala'iは1952年生まれ、Hoseyn Alizadehは1951年生まれで、両者ともにAli-Akbar Shahnaziなどの多くの師に学びました。
両者の独奏を聞くと、この特異な音楽が、個人的な独創性とは無縁の、伝統を受け継いだ正統的なものであることが理解できます。左CDはDastgah-e Chahargahを教科書的に演奏したもので、右CDはChahargahに基づく即興という位置づけらしいのですが、門外漢には差異が判らないほど似た印象を与えます。
録音は左CDのほうが鮮明であり、合奏よりも独奏のほうが音楽の特徴が明確に出ているような気がするのですが、普通の人には右CDのほうが聞きやすいと思 います。(但し、不協和音だらけの音楽なので、聞いて楽しめる人は少ないでしょうし、私も楽しく聞けるというわけではありません)

Hejrani 

Mahoor, M.CD56 , 1982-1983録音

Hoseyn Alizadeh : tar ?

Dastgah-e Segah 他 全17曲

マルク・デュクレ/ デターユ 

ボンバ, BOM22006 , 1997(原盤Winter & Winter 910003-2)

Marc Ducret : ギター、12弦ギター

ル・デコール 他 全7曲 

左CDはイラン古典音楽のタール独奏、右CDはフリー・ジャズのギター独奏です。
左CDの解説は読めない文字なのですが、写真を見ると8の字型のタールをHoseyn Alizadehが独奏しています。演奏は多分、ペルシャ古典音楽に基づく即興だと思います。繊細で不協和音の多い音楽ですが、上記表紙の月の絵のイメー ジどおりという感じです。lunaticは通常、「狂気じみた」と訳されますが、ペルシャでも同様の意味なのでしょうか?月には、もう少し深い意味もある ような気がします。
右CDは、左CDに近い印象があるアコースティック・ギター独奏なので聞き比べました。Marc Ducretの演奏は、フリー・ジャズの中でも繊細で不協和音が多いシャープなものだと思っていましたが、左CDの後では、聞きやすい地に足がついた音楽と感じました。
イラン古典音楽におけるタールやセタール独奏の特異性は並外れたものなのでしょう。これに比べれば、フリー・ジャズや現代音楽は児戯に等しいとさえ感じます。

クルド族の音楽 

Philips(Unesco), PC-1712 , 1979

モハメド・アリ・テエジョ : メイダン・サズ /サイド・ハッサン : タンブーラ /ハモ・ハッサン・ラアショ :ゾルナ /ハナン・アハメド・ナセル :ピック /他

ジャバリーとビナフシュの歌 他 全5曲 

クルド族の音楽を収録したLPです。クルド族はイラン西部からトルコ東部の山岳地帯に 分布し、極めて古い来歴を持つそうです。音楽はペルシャに近く、ペルシャが洗練されているのに対し、より直情的だということが、本LPを聞いても理解でき ます。本LPは、生き生きとした素晴らしい演奏が多いのですが、印象的なのがリュート系の弦楽器タンブーラとメイダン・サズによる即興演奏と、チャルメラ 風の吹奏楽器ゾルナ(ブルターニュのボンバルドに似ています)の演奏です。
クルドの音楽家は、聴衆の苦悩を癒す慰安者の役目も果たしているそうで、音楽家の元におもむいて悩みを打ち明ける人がいれば、彼らの心が和むまで即興の節に合わせて歌い続けるのだそうです。

 

Hossein Farjami plays Santoor

ARC , EUCD1100 , ? 

Hossein Farjami :サントール /Abdollah  Khorvash : Tonbak(太鼓)

Dastgah  Shur 他 全4曲 

サントールによるイラン古典音楽を収録したCDです。サントールはチター属の打弦楽器であり、華やかな音色を持つ楽器です。Hossein Farjamiは1944年にテヘランで生れ、成人後はイギリスに住んでおり、楽器の修復・製作や作曲・編曲も行うようです。
本CDには各曲の由来や使用音階などの解説も付いており、真面目で上品な演奏だと思います。音階・テーマを提示後の即興演奏という北インド古典音楽と共通した構成のよう
ですが、落ち着いた華やかさという印象を受けます。
上品なサントール演奏が好きな人にお勧めです。

 

Persian Art Music

AUVIDIS , B6808 , 1995 

Sorouch IZAI :唄 /Ostad Rahmatollah BADIYI : kemenche / Bruno CAILLAT : Tumbaki & daf(太鼓) / Djalai AKHBARI : サントール

NIAYECH 他 全5曲 

女性の唄を主としたペルシャ古典音楽を収録したCDです。Sorouch IZAIはテヘランでの少女時代にAbdollah DAVAMIを初めとして多くの師匠からペルシャ古典音楽(唄、作曲法、器楽演奏)を習いました。現在は医者としてオーストリアのウィーンに住みながら、演奏活動も続けているようです。
本CDでは華やかで伸びのある声が印象的です。正統的なペルシャ音楽なのだと思いますが、割と聴きやすく馴染みやすい演奏です

華やかなペルシャ古典音楽が好きな人にお勧めです。