Blues


Son House /Father of Folk Blues 

COLUMBIA, CS9217 , 1965年? 

Son House : ギター(ドブロ?)、唄

Death Letter 他 全9曲 

ブルースのLPです。Son House(1902-1988)は「フォーク・ブルースの父」というLPタイトルからも分かるように最も古いブルース歌手の一人です。ミシシッピで 1930年に最初のレコードを出したようですが、娯楽音楽の興隆が嫌になり1948年にギター演奏を中断した後、1965年?に再発見され久しぶりに録音 したものが本LPです。
ブルースはジャズの源流の一つです。初期のブルース歌手は、男性はギター弾き語り、女性はバンド演奏で唄うというスタイルが一般的だったようで、「ブルー スの女帝」ベッシー・スミス(1894-1937)はジャズ歌手の元祖でもあります。しかし、サン・ハウスをジャズ歌手と言うと奇異な感じがするのは演奏 スタイルのせいでしょうか?現代のジャズは、サン・ハウスの唄う素朴なブルースとは全く異なるものになってしまいました。
本LPの演奏と唄は力強く聞き応えがあります。特に個性的なギター(ドブロ?)演奏は魅力的です。唄は、ゴスペル的な響きが感じられ、何となく教会で牧師 様から説教を聴いているような気分もします。
漫才で言えば「つっこみ役」のサン・ハウスから「こんなバカなことをしたらイカン」と叱られているような感じがするのは私の錯覚でしょうか?

今回、LPの曲Death Letter などを聞き返して感じたのですが、歌詞は宗教的な内容のものらしく、ゴスペルに分類されるべき歌手だと思いました。普段は物静かな人物で、自分はトラク ター運転手であり職業的歌手であるとは思っていなかったようです。
外見で善悪を見分けるのは困難です。以下にスエデンボルグがらの抜粋を示します。

憎悪とは何であるかを述べよう。憎悪は人間を殺そうとする努力である火をそれ自身の中に持っており、その火は怒りにより明らかに示されている。
善い者たちのもとに悪に反抗して憎悪し、その結果、怒るように見えるものが在るが、これは憎悪ではなくて悪に対する毛嫌い(反感)であり、またそれは怒りではなくて、善に対する熱意であり、その内には天界の火が隠れているのである。
なぜなら、善い者は悪から遠ざかって、外見では隣人を怒っているように見えるが、そのことは彼らが悪を取り除くためであり、かくて彼らは隣人の益を顧慮しているのである。


The Legend of Sleepy John Estes 

delmark(TRIO), PA-3011 , 1962年録音 

Sleepy John Estes : ギター、唄 / Hammie Nixon : ハーモニカ /他

Rats in My Kitchen 他  全12曲 

ブルースのLPです。Sleepy John Estes(1899-1977)は1930年代に多くのレコードを残し、既に死亡しているとばかり思われていた1962年に極貧状態で再発見され、ギ ターを与えられて録音されたのが本LPです。
本LPではハーモニカ等の伴奏に支えられて淡々と唄っているという感じです。弱弱しく力強さは感じませんが、宣伝文句にあるように「涙なくしては聞けない 悲痛なブルース」という印象はありません。
クラシックやユダヤ音楽では時折、救いようの無い「わびしさ」や悲痛という印象を受ける演奏がありますが、本LPでは窮乏を嘆いても自分自身を笑っている というようなユーモアを感じる時があります。極貧はつらいでしょうが、お金の奴隷のような人よりも「自由」に近いのだと思います。
漫才で言えば「ぼけ役」のエスティスが「俺はバカだった」と反省しているような感じでしょうか?
自分のバカさを笑えるようになれば気楽な人生をおくれるでしょう。自分は利口なはずだという勘違いが落胆を生みます